知っているのは携帯電話の番号だけ。
メールアドレスは書かれていなかったから。

今日も、登録しただけで一度も活用した事のない番号をアドレス帳から引っ張り出してはまた閉じる。
その繰り返しの毎日で得た報酬といえば

すっかり彼の携帯番号を暗記した、

それだけだ。




ボクの大好きな◆小鳥◆ちゃん






渡されたそれには11桁の数字が。
携帯電話の番号があった。
直ぐにそれが誰の番号であるかは分かっけれど、連絡を取ろうとは思えなかった。
だって―――――







「意味が分からかったんだよ」

「えっ!それが電話して来なかった理由!?」

「ああ。用もなかったしな」

「…そうですか」






目の前の男の目線が、頭ごと一気に地面に向かって落とされる。
癖のある髪は重力に引き付けられているのか、下に吸い取られるようにしてしな垂れている。
まるで此方に自分の落ち込み具合を見せ付けるかのようなソレに同情なんかしない





「本当に分からなかった?」

「………」





ほら、直ぐに持ち上がるんだ。この頭は。


誰だって、いきなり携帯番号書かれた紙(正確にはレシートだった)渡されたら驚くだろ?
そりゃ…それが友達だったり、知ってる奴からだったら別にこんな驚かねえし変じゃねえけど…
だってアンタは…





「アンタ、ただの此処の常連だろ?」

「そうだよ〜」

「しかも缶コーヒー1本だけしか買わねえケチな常連」←120円

「じゃあ、今日は2本」←240円

「変わんねえよ」

「何時電話くれる?」

「240円になります」←無視





夜中のコンビニは何処も利用客が少なく静かなものだが…




「ほら、もう1本はうちは君の分」

「…どうも」




この店はそうでもない。
むしろ煩い…と思う。



こうやって毎日のように同じ時間に店にやって来ては、缶コーヒー1本だけ買って、ついでに俺と話して帰るこの常連客。
始めの内は、俺の人付き合い下手も手伝って、話し掛けて来るこの男を殆んどシカトに近い対応で通していたが、
…何時だったか、気が付いたらこんな感じに普通に話すようになってた。

…本当に何時から、どんな風に、何がきっかけで今の様な関係になったのか、思い出そうとしても曖昧な記憶が余計ややこしくするだけで。
それ位にこの客は自然だった。
…不思議な奴。


そしてこの間、
いつもと同じ様に缶コーヒーを買って終わりかと思ったらその日は違って。
いつもはいらないと言っているレシートをせがんで来た。





『はい、これ。』

『…何だ、これ』

『見れば分かるでしょ〜俺の携帯番号』

『そういう意味で聞いたんじゃねえよ。何の意味だって聞いたんだ』

『何時でも掛けてね』

『答えろよ』

『じゃあ…またね』




結局コイツは俺の質問を無視して珍しくさっさと帰って行きやがった。
俺はと言うと、突然取った奴の行動の意味が掴めなくて、ただボーッとつっ立って紙を握りしめていた。それだけだった。

すぐに捨てれば良かったそれを、それも握りしめてたせいで皺クチャになったのに、捨てないで今まで取っておいたのは…嫌ではなかったから。
正直、ちょっと嬉しかった。

でも、納得は行かなくて。
どうしてコイツが俺に、携帯番号なんて個人情報を教えたのか知りたかった。
その行動にどんな意味を込めていたのか。
俺に何を伝えたかったのか。

そうじゃなきゃ俺だって応えられない。
アンタの事、嫌いじゃないから。







「あの…さ」

「ん?」





2人で雑談をするでもなく、黙ってコーヒーを飲んでいたら
このコーヒーの売上貢献人、常連客がいきなり口を開いた。





「バイトなのに、そんな堂々と店の中で一服して平気なの?しかもレジで。」

「構わねえよ。誰もいねえし。店長もやってる。」

「そっか…」

「で、あの紙はどういった意味…」

「あっ!新商品出たんだね〜俺、このガム好きなんだよ」

「…あっそ」





話反らしやがった (怒)

俺が聞きてえのは
レジでバイトの俺がコーヒー飲んでる事にそれを恵んでくれたアンタが心配してくれてる事とか、
アンタの好きなガムのシリーズに新商品が出てアンタが嬉しいって事とかじゃなくて!
紙!携帯番号!
何でそれを俺に教えたのかって事なんだよ!
ウスラトンカチ!(怒)






「うちは君はこのガム好き?」






だーかーら!
ガムは置いとけ!!(怒)

そうやって人をからかうだけなら嫌なんだ!
俺のちょっと嬉しかった気持ちはどうなる!
あの日からアンタの携帯番号とにらめっこして、気が付いたらアンタの携帯番号覚えちまった俺はどうなる!
電話したくても何だか怖くて出来なかった俺は何だったんだよ!
すんげームカつく!!!







「うちは君?」

「あっ!? (怒)」

「…あの、どうしたの?」

「見りゃ分かんだろ!テメエに怒ってんだよ!」

「…すみません」

「理由も聞かねえで謝んな!」

「分かってるよ…ごめん」







温かかった缶コーヒーが、時間が経って今じゃぬるい。
不味い。
きっと今、この店を包んでる空気も相当不味いだろうな。
良い気味だ。

今なら存分に頭垂れたって構わないぜ。今度は俺がシカトぶっこいてやるよ。







「この前の紙…携帯番号の事なんだけどさ…」





シカト。
顔なんてもう見ない。
あっち向いてやる。





「渡したのは言いたい事があって…」





シカト。





「…でも、そうやって回りくどいやり方して、うちは君に気付いてもらおうとして…俺、ずるかった。ごめん。」





シカト。
回りくどくすんな。
分かるかってんだ。





「…うちは君」





何だよ。もう帰れよ。






「うちは君が好きなんだ」








シカト…出来なかった。
呆れてそっぽ向いていた顔を思わずアイツに向けてしまった。

目があったアイツの顔は情けねえ位真っ赤に染まってて、こっちまで恥ずかしくなって…
どうしてか分からないけど、気付いたら
今、笑ってしまっているのは、
やっぱり嬉しいからなのかな。


………やべ、






ドキドキする。







【終わり】


リクエスト:
「誰の目から見てもサスケに惚れてる片想いカカシ」
でした。
(分かりずらくてすみませんです)


大好きな小鳥さんへv


2008.4.9

あんっ!(すみません)

タイトルが…v(ありがとうv)

大好きな大好きな「5222」きみ子さんから、頂きましたカカサス小説vv
カカシが切羽詰っててたまりません…。
私の大好きな ヘ タ レ v

図々しくも2つも素敵小説を頂き、さらに2つともUP許可を強制的に頂いてしまいました…(汗)

UPするのが大変遅くなってしまいまして…(涙)

愛してます、きみ子さん。

2008/05/18

小鳥由加子